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スカム対策について |
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マンホールポンプ施設に流入してくる汚水には、油脂や比重の低い有機物が水面上に浮遊しており、ポンプにより排出されずに残った浮遊物が集まり腐敗して固まりスカムとなります。このスカムは、そのまま放置しておくと、更に成長して、マンホール内の水面や壁面を厚く覆って悪臭の発生や、ポンプの自動運転を妨げることがあります。このため定期的に清掃を行うなど、維持管理が必要であり、維持管理費が高くなる問題がありました。 |
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スカム対策の基本は、油脂類などの水面に浮遊して槽内に滞留する異物がスカム状態になる前にポンプ吐出水とともに回収(排水)することで、スカム発生を防止することにあります。ここでは、マンホールポンプなどで行われているスカム対策について記載します。
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ポンプ台板(予旋回槽など) |
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スカム発生の原因となる残留浮遊物を減少する対策には、ポンプ吸込み口に吸込みノズルを取り付けてポンプ吸込み可能水位を低くすることで、ポンプによる排水完了時の残留水を低減させることができます。また、ポンプによる残留水低減をより効果的に行うために、マンホール底部に設置されるポンプ台板との組み合わせにより、マンホール底部に堆積する沈澱物の回収を行います。ポンプ台板には次のものがあります。
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(1) |
釜場 |
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各ポンプ吸込み口部に円筒状の小さなピットを設けて、残留汚水を一ヶ所に集めて排水することで残留水低減をはかる構造のコンクリート製の台板。
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(2) |
予旋回槽 |
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図-1に示すように各ポンプ吸込み口部に円筒状の小さなピットを設けるとともにピットに流入する溝を設けて周囲の異物をピット内に流入させるとともに、流入水によりピット内に旋回流を起こさせて撹拌することで異物回収の効率を高める構造の樹脂製の台板。 |
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これらのポンプ台板は、ポンプ排水能力に影響を与えることはなく、又、動力が不要で可動部が無いため、維持管理コストをかけずにマンホール底部に堆積する異物回収が可能となります。 |
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しかし、ポンプ台板は、マンホール径に対するポンプ排水能力により回収能力が左右され、大きなマンホール槽と小出力のポンプとの組み合わせでは、周囲に堆積物が残る場合があります。又、異物回収は、マンホール内の水位が低下したポンプ停止水位付近で効果を発揮するため、運転水位付近のマンホール壁面に付着した異物には効果がありません。
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予旋回槽 |
マンホール槽内設置例 |
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図−1 予旋回槽
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槽内かくはん装置 |
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予旋回槽などのポンプ台板は、ポンプ運転中(ポンプ停止水位付近)に槽内撹拌して異物回収を行いますが、槽内撹拌装置は、ポンプ停止中もしくはポンプ運転開始直後(ポンプ運転水位付近)に槽内撹拌して異物回収を行うものです。 |
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水面に浮遊している異物は、ポンプ運転時の水位低下と共にマンホール壁面に付着する場合があります。通常は、ポンプ停止後の水位上昇により再度浮遊するなど、浮遊・付着を繰り返して最終的にポンプにより排出されますが、ポンプ運転水位付近で付着した異物はそのまま固着してスカム状態となります。そのため、槽内撹拌装置は、ポンプ運転水位付近で槽内を強力に撹拌することで浮遊している異物を破砕し、壁面に付着することを防止するもので、次のものがあります。
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(1) |
ポンプ部に取り付けた噴射撹拌装置 |
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ポンプ運転開始時の吐出水量の一部もしくは全部を槽内に噴射して滞留している異物を撹拌させる装置で、マンホール底部より撹拌することで沈澱物を主体に槽内撹拌を行います。
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(2) |
吐出配管に取り付けた噴射撹拌装置 |
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(1)と同様に撹拌させる装置で、マンホール上部より撹拌することで浮遊物を主体に槽内撹拌を行います。
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(3) |
小型ミキサによる撹拌装置 |
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小型ミキサをマンホール底部に設置して槽内撹拌を行う装置で、ポンプ吐出水量に影響を与えずに槽内撹拌を行います。 |
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これらの撹拌装置は、強力な撹拌力により浮遊する異物や沈澱する異物を汚水と共に撹拌して壁面などへの異物の付着を防止し、さらに、汚水が均一化されポンプ及び配管内をスムーズに通過できる効果もあります。 |
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しかし、槽内撹拌装置のみではポンプ排水完了時の残留水低減を行うことは出来ないため、底部に堆積物が残る場合があります。又、撹拌装置を取り付けるために相対的にマンホールが大きくなり、小さなマンホールでは水流による水位計への影響も危惧されます。 |
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なお、噴射撹拌装置は、ポンプ吐出水量の一部もしくは全部を一時的に槽内撹拌に利用する装置であり、何らかの不具合が生じた場合は、マンホールポンプの排水能力の著しい低下を招きます。又、ポンプの吐出水を利用しない小型ミキサは、ポンプ運転以外の動力回路が必要となります。
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使い分け |
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全てのマンホールポンプ施設に予旋回槽や槽内撹拌装置などのスカム対策が必要となるものではありません。スカム対策は、油脂類の流入などスカム発生が危惧されるマンホールポンプ施設などに必要とされる対策であり、予旋回槽などのポンプ台板による方法と、噴射撹拌装置などの槽内撹拌装置による方法がありますが、それぞれ、長所・短所があり、流入する異物性状や流入量に応じて選択する必要があります。
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(1) |
スカム対策は行わない |
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グラインダポンプを使用する圧力式下水道収集システムは、汚水発生源に最も近い管路施設の末端に設置され、又、ポンプ槽も小さく、即時に収集・搬送するためスカムの発生が少ないことから、予旋回槽やかくはん装置は必要としないポンプ施設です。同様に、管路施設の末端付近に設置されるマンホールポンプ施設もスカムの発生は少ないと考えられます。
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(2) |
予旋回槽などによるスカム対策 |
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一般的に油脂類など水面に浮遊する異物が比較的少ない場合は、維持管理コストの少ないポンプ台板による方法が有利と考えられます。
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(3) |
槽内撹拌装置によるスカム対策 |
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油脂類の流入が多い場合や、槽内滞留時間が長くて異物が固着することが想定される場合は、強力な撹拌能力を持つ槽内撹拌装置による方法が有利と考えられます。
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(4) |
予旋回槽と槽内撹拌装置によるスカム対策 |
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より一層効果をあげるためには両者を併用することが、一番のスカム対策となります。 |
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この様なスカム対策は、いずれもコスト高となりますので異物の性状や流入量を調査して対応することが重要です。 |