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グラインダポンプの導入 |
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グラインダポンプは、個別処理による地下水汚染や環境衛生不良に対して集合処理に切り替える際に、自然流下方式に代わる新しい発想に基づく汚水の収集システムとして提案された「圧力式下水道収集システム」に使用する収集ポンプとしてアメリカで開発されたポンプです。この「圧力式下水道収集システム」が、欧米の中小地方都市を中心に採用され、現在の高い下水道普及率を実現しました。
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日本においても、中山間部をはじめとする中小地方都市における下水道普及率の向上が課題となっており、従来の自然流下方式に代わる低コストの汚水収集システムとして「圧力式下水道収集システム」の採用が推進されております。
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グラインダポンプの特徴 |
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グラインダポンプは、ポンプ吸込み口部に破砕機構(グラインダ)を持つ小型水中汚水ポンプです。多くの水中汚水ポンプは、ポンプケーシング内に大きな空間を有して、汚水中に含まれる異物をそのまま通過させる異物通過性を重視した無閉塞形の構造ですが、グラインダポンプは、汚水中に含まれる異物を積極的に破砕して通過させる破砕形の構造のポンプです。
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収集用ポンプに求められる条件は、小水量(小口径)ですが汚水幹線まで収集・搬送するために高い揚程が必要となり、高い揚程を得るためには、ポンプケーシング内の異物通過空間が極端に小さくなります。このため、小水量を扱う収集用ポンプとして、小型水中汚水ポンプと破砕機構(グラインダ)を組み合わせることで異物対策を行う破砕形のポンプ(グラインダポンプ)が開発されました。このグラインダポンプを採用することで、圧力管路の配管径も極端に小さくでき、効率的な汚水収集が可能となります。
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グラインダポンプに類似するポンプとして、ノンクロッグポンプ(セミオープン羽根タイプ)の羽根翼部先端に超鋼チップを取り付けた「カッタ機構」を有するカッタ付ポンプがありますが、カッタ付ポンプは羽根翼先端に絡みつくような長尺の繊維状の異物のみを切断するもので、ほとんどの異物は破砕されずに通過するため、基本的な構造は無閉塞形に含まれます。
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グラインダポンプの破砕機構(グラインダ)は、ポンプ吸込み口部にシャフトと共に回転する回転刃と、ケーシング側に固定された固定刃より構成され、この回転刃と固定刃の隙間を異物が通過する際に数mm程度に細かく破砕されます。ポンプに吸い込まれる汚水は全量が破砕機構(グラインダ)を通過し、汚水中に含まれる異物も全量が破砕されるため、ポンプケーシング内及び吐出配管途中での異物による閉塞は発生しません。
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ポンプは、異物が細かく破砕された汚水を搬送するため、より高揚程特性を示すポンプ形式を採用することが可能となり、圧力式下水道システムにおける「多重圧送」に適したポンプ特性を示します。
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なお、グラインダポンプには、遠心式グラインダポンプタイプと容積式グラインダポンプタイプがあります。両タイプとも「圧力式下水道収集システム」に使用するポンプですが、構造的には次のような違いがあります。
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(1) |
容積式グラインダポンプ |
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容積式グラインダポンプは、最初に圧力式下水道収集システムに採用されたポンプです。構造は、図-2に示すようにシャフトと共に回転するステンレス製のネジ式ロータと固定されたゴム製のステータとの間に出来る空間に汚水を吸い込んで加圧・搬送するポンプです。ポンプ吐出量は、この空間の大きさとポンプ回転数により決定され、揚程が変化しても吐出量がほぼ一定量となります。日本国内では、内線規程による始動電流の制限により、単相200Vの0.75kWのみが販売されています。又、ポンプは据置式で、配管とはレバーカップリングで接続しますが、ポンプ本体に水位計と逆止弁を内蔵するため据付が比較的容易に出来ます。 |
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図−2 構造図(容積式)
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破砕機構(グラインダ)は、図-3に示すように回転刃と固定刃で異物を削るように時間をかけて徐々に破砕します。ここで、瞬時に多量の異物や大きな異物などを吸い込みにくくするために、4極モータで回転速度を抑えると共に、ポンプ吐出量に対して破砕機構の外径を大きくして吸込み速度を遅くしています。さらに、破砕できない金属片や砂などの固形物も吸い込みにくくするために、ポンプ吸込み口と貯水タンク底部までの隙間を大きくしています。 |
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図−3 破砕機構(容積式)
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また、ポンプ部(ロータ、ステータ間)に空気が入らないように停止水位をポンプ部より高い位置に設定し、始動時のステータ(ゴム材)のかじり込み(焼き付き)を防止します。
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(2) |
遠心式グラインダポンプ |
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遠心式グラインダポンプは、図-4に示すように羽根車の回転による遠心力で汚水を加圧・搬送するポンプです。高揚程特性を示す渦流形又はセミオープン形の羽根車を採用しています。吐出量は他の遠心式ポンプと同様に揚程により変化し、高揚程で使用する時は吐出量が少なく、低揚程で使用する時は吐出量が多くなります。日本国内では単相200Vの0.75kW、1.0kWの他に、三相200Vの0.75kW〜3.7kWのポンプが販売されています。 |
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図−4 構造図(遠心式)
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ポンプは据置式あるいは着脱式を採用できます。据置式ではポンプと配管はレバーカップリングで接続します。着脱式ではポンプの自重で配管との接続が可能となり、据付・点検時のポンプ引上げ・吊降ろし作業が比較的容易に出来ます。また、水位計とポンプが一体でないためそれぞれのケーブル処理が必要となりますが、水位計は、転倒式(フロートスイッチ)、気泡式、投込み式などと任意に組み合わせることが出来ます。 |
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破砕機構(グラインダ)は、図-5に示すようにポンプ吐出量に対して破砕機構の外径を小さくして吸込み速度を速くし、多量の異物や大きな異物も一気に吸い込んで切断します。さらに、吸い込みにくいビニールなども排除ノッチに絡めて吸い込みやすくしています。また、破砕できない金属片などの固形物は排除ノッチではじき飛ばしポンプに吸い込まれにくくしています。 |
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図−5 破砕機構(遠心式)
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ポンプ性能 |
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グラインダポンプは、小口径(小出力)で高揚程特性を持つ小型水中汚水ポンプです。多くの水中汚水ポンプは、異物通過性を重視するためにポンプケーシング内に大きな空間を有しており、必然的にポンプ口径も大きくなるため、僅かな汚水を搬送する場合でも大きなポンプ(一般的にはポンプ口径65mm以上)が必要となります。但し、流入汚水量が多い場合でも最適なポンプ(一般的にはポンプ口径150mmまで)が選定できます。
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下水道法施行令の改正などにより圧力管路の最小口径が30mmとなりましたが、グラインダポンプは、破砕機構(グラインダ)により異物を細かく破砕しており、小口径(ポンプ口径32mm)でも問題なく搬送出来るため、少ない流入汚水量も小配管(30mm)で搬送できます。但し、破砕機構(グラインダ)での損失が大きいため、大量の流入汚水量を扱う大口径グラインダポンプは製作されておりません。
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容積式グラインダポンプタイプと遠心式グラインダポンプタイプは、表-2に示すような仕様の違いの他に、次のような違いがあります。
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表−2 グラインダポンプの基本仕様 |
項 目 |
遠心式 |
容積式 |
口 径 |
mm |
32 〜 50 |
32 |
出 力 |
kW |
0.75〜3.7 |
0.75 |
吐出し量 |
m3/min |
0.05〜0.35 |
0.05 |
全 揚 程 |
m |
5 〜 30 |
5 〜 30 |
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(1) |
容積式グラインダポンプタイプ |
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容積式グラインダポンプは、ポンプ全揚程が変化してもほぼ一定量のポンプ吐出量となり、低揚程から高揚程まで幅広い揚程に対応できるため、単一圧送方式・多重圧送方式などの高揚程仕様で威力を発揮できます。ただし、図-6に示すように、極端な高揚程では過負荷となるため、締め切り運転のような状態は避ける必要があります。又、ポンプタイプは0.75kW-4Pタイプのみで吐出量も少ないため、流入汚水量が多い場合は2台設置型(デュプレックスタイプ)とするか、GPユニット数を増やすなどの対応が必要となります。
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容積式の破砕機構(グラインダ)は、吸込み速度を低く抑えているため、ポンプ運転時間あたりの破砕能力が少なくなり、流入異物が多い時は異物の一部が貯水タンク底部に堆積する場合があります。
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(2) |
遠心式グラインダポンプタイプ |
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遠心式グラインダポンプは、ポンプ全揚程の変化によりポンプ吐出量も変動し、幅広い流入汚水量に対応でき、又、出力範囲も0.75kWから3.7kWのタイプがあるため、流入汚水量が多い場合でもポンプ台数を増やさずに対応できます。ただし、遠心式の破砕機構(グラインダ)は、吸込み速度を速くしているため、砂などの硬い固形物が多い場合も容易に吸い込まれ、回転刃と固定刃の磨耗が促進されたり、拘束状態になったりします。
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又、図-6に示すように、極端に低揚程大水量で使用した場合は、キャビテーションの発生を考慮する必要があります。これに対して、0.75kW-4Pタイプでは4m以下の低揚程領域での採用が可能となり、単一圧送方式の宅内排水設備でも威力を発揮できます。 |
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図−6 グラインダポンプの限界
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4 |
問題点とその対策 |
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(1) |
グラインダポンプは、家庭敷地内や汚水管路の最上流側に設置することを基本とします。 |
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グラインダポンプの破砕機構(グラインダ)は、回転刃と固定刃の隙間を通過させて数mm程度に細かく破砕します。軟らかい異物はその形状にかかわらず破砕できますが、硬い異物は回転部への噛み込みにより拘束状態となる危険性があるため、沈殿物を積極的に排水する吸込みベルマウスは取り付けできません。
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特に、流入汚水中に砂などが含まれると、拘束のほか、破砕機構(グラインダ)の著しい磨耗を招くため、相対的に土砂流入が多い汚水管路の下流側への設置には適しません。
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(2) |
グラインダポンプは、吐出量が少ない。 |
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圧力式下水道収集システムでは、グラインダポンプ1台設置型(シンプレックス)を基本とし、予備機は共通予備として別途保管としますが、ポンプ計画吐出量に対してポンプ吐出量が不足する場合や、機種の統一のために小出力のポンプを選定したい場合は、2台設置型(デュプレックス)とすることで吐出量を満足する方法があります。この際もポンプ2台分の吐出量でポンプ計画吐出量を満足することを基本とします。
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