ポンプなどに影響を与える異物の性状には、固体、液体、気体がありますが、ポンプ(羽根車)の形状に対して異物(特に「固形物」「繊維物」「ビニル類」など)が与える影響は、図-2に示すように大きく分けて「積層」「閉塞」「拘束」に分類されます。
図−2 異物がポンプに与える影響
 
(1) 積  層(セキソウ)
 
 羽根翼入口部に長尺の繊維物等が積み重なり、ポンプが排水出来ない(排水量が少ない)状態。
 
(2) 閉  塞(ヘイソク)
 
 大きい異物や長い異物が団子状に絡まって通水部(ポンプ吸込口・羽根車内空間)を塞ぎ、ポンプが排水出来ない(排水量が少ない)状態。
 
(3) 拘  束(コウソク)
 
 硬い異物が回転部(羽根車)と固定部(吸込みカバー)の隙間に噛み込み、ポンプが回転出来ない(回転しにくい)状態。
 
 このような異物の影響を回避するために、ポンプ(羽根車)は、表-3、表-4、表-5のような手法が採用されています。
 
表−3 ポンプ(羽根車)の積層に対する変遷
内  容 略  図
@ 羽根翼枚数の削減羽根翼枚数を極限まで減らすことによって、要因を減らすことで積層を減少させる。
(採用例)ノンクロッグ羽根、斜流羽根、スクリュー羽根
A 切断機構(カッター)の採用羽根翼入口部の先端と吸込みカバー入口部との間に切断機構を設けることによって、長尺の繊維物等を切断することで積層を減少させる。
(採用例)ノンクロッグ羽根(カッター付きポンプ)
B 羽根翼入口部の廃止羽根翼と吸込みカバーとの隙間を極限まで大きくすることによって、要因となる羽根翼入口部を小さくすことで積層を減少させる。
(採用例)渦流羽根
C 羽根翼入口形状の変更後退翼(羽根翼入口形状が流水方向に対して円周方向側に傾斜させた翼形状)の採用によって、異物を吸込みカバー側に移動させることで積層を減少させる。
(採用例)ノンクロッグ羽根、スクリュー羽根
 
表−4 ポンプ(羽根車)の閉塞に対する変遷
内  容 略  図
@ 汚水通過空間の拡大羽根翼枚数を減らしたり羽根翼高さを高くしたりすることによって、羽根車内の通過空間を大きくすることで閉塞を減少させる。
(採用例)ノンクロッグ羽根、スクリュー羽根
A 汚水通過空間の羽根の廃止ケーシング内の異物通過空間より上方に羽根車を取り付けることによって、羽根車内を異物が通過しないことで閉塞を減少させる。
(採用例)渦流羽根
B 破砕機構(グラインダ)の採用吸込口に破砕機構(グラインダ)を取り付けることによって、異物を破砕することで閉塞を減少させる。
(採用例)グラインダポンプ
 
表−5 ポンプ(羽根車)の拘束に対する変遷
内  容 略  図
@ 羽根翼枚数の削減羽根翼枚数を極限まで減らすことによって、要因となる羽根車と吸込みカバーとの接触面積を減らすことで拘束を減少させる。
(採用例)ノンクロッグ羽根、スクリュー羽根
A オープン羽根からクローズ羽根に変更クローズ羽根を採用することによって、要因となる羽根車と吸込みカバーとの隙間を無くすことで拘束を減少させる。
(採用例)ノンクロッグ羽根(クローズ羽根)
B 隙間の拡大羽根翼と吸込みカバーとの隙間を極限まで大きくすることによって、異物通過粒径と同じ大きさの隙間とすることで拘束を減少させる。
(採用例)渦流羽根
C 排除溝の採用吸込みカバー面に円周方向の溝を設けることによって、隙間に噛み込んだ異物を羽根外周に排除することで拘束を減少させる。
(採用例)ノンクロッグ羽根、スクリュー羽根
D 羽根翼と吸込みカバーとの接触長さの削減羽根翼入口部を傾斜させることによって、羽根下端と吸込みカバーとの接触長さを極限まで短く(点接触)することで拘束を減少させる。
(採用例)ノンクロッグ羽根

※本文は、雑誌「月刊下水道」に投稿した原稿を加筆修正したものである。
 
作成日:平成19年12月18日
(社)日本産業機械工業会 排水用水中ポンプシステム委員会

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