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(1) |
小さくて軟らかい異物 |
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汚水中に混入する可能性は量的にも多いと想定されますが、汚水ポンプを容易に通過するため、ポンプに与える影響は僅かとなります。
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(2) |
大きくて硬い異物 |
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ポンプに与える影響が非常に大きいのですが、不法投棄物などを除き、供用開始直後や枝管接続時などの工事残骸が中心で量的にも非常に僅かなため、過渡的な影響となります。
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(3) |
小さくて硬い異物・軟らかくて大きい(または長い)異物 |
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量的には少ないのですが、意図的か否かは別として断続的に流入する可能性があり、ポンプに与える影響も拘束・閉塞に容易に結びつくため、留意する必要があります。
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1 |
異物の大きさ(容積)による影響 |
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異物の大きさ(容積)に対する通過性能の判断基準には「異物通過粒径」があり、ポンプ口径と物理的通過空間との比(%)で表されます。
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汚水中に混入する異物が全て球形(ボール状)とはいえないため、異物通過粒径が大きいことで異物通過性能が優れているとは断定できませんが、比較的わかりやすい判断基準のため広く採用されています。
ただし、汚水の入り口部(トイレなど)の物理的空間(通過径)は限定されるため、ポンプ口径に関係なく一律にポンプ口径比(%)で異物通過粒径を表すことは、大口径ポンプに必要以上の通過空間を求める(結果的にポンプ効率が低下し必要以上に大きな出力となる)などの弊害もあります。
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異物通過径を具体的な寸法で示す技術書等では、公共排水設備関係ではφ53mm以上、農集処理場関係ではφ35mm以上、農集ポンプ施設関係ではφ65mm以上などの値が示されています。
しかし、汚水発生源(各家庭)に近い管路上流側に設置するポンプでは、通過形ポンプの場合では渦流ポンプに代表される異物通過粒径の大きなポンプが採用され、また、比較的住民の協力を得やすいため、ポンプ口径に関係なく異物通過粒径がφ50mm程度以上有れば十分な異物通過性能を確保できるものと判断されます。
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2 |
異物の大きさ(面積)による影響 |
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木板などの硬くて薄い異物は、変形しないため前項の異物通過径と同じ扱いとなりますが、綿布類(ハンカチ)などの軟らかくて薄い異物は、容易に形状が変化するため、異物通過径より大きな面積を持つものも通過できます。汚水ポンプに対する面積の大きい異物の影響としては、
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@ |
渦流により団子状となって、閉塞等の影響を与える。
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A |
ねじれてひも状となって、隙間や回転部に絡みつき、拘束等の影響を与える。
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B |
渦流ポンプなどの羽根車と吸込みカバーとの間の空間が大きいポンプでは、羽根車前面に張り付いて揚水不能等の影響を与えます。
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面積に対する通過性能の判断基準も特に定められていませんが、表-1に示す実験報告では、面積の大きな異物(綿布など)の通過特性は、通過粒径の大きいポンプの方が優れていることが判ります。
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表−1 異物(綿布)通過実験報告 |
口径 |
通過粒径 |
通過綿布寸法※ |
φ50mm |
φ35mm |
150mm×150mm |
φ50mm |
φ50mm |
200mm×200mm |
φ65mm |
φ65mm |
250mm×250mm |
※投入後もしくはポンプ再起動後に通過したもの |
※ポンプタイプは渦流ポンプ |
「即時排水型ビルピット設備技術マニュアル」
(財)下水道新技術推進機構 より |
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3 |
異物の長さによる影響 |
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長尺の異物も硬いか、軟らかいかによりポンプに対する影響が異なります。
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(1) |
長尺の硬い異物 |
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汚水ポンプに多く使われる遠心ポンプは、吸込口からの軸方向の流水を羽根車の遠心力により軸と直角方向の流水に方向転換し、また、吐出曲管により垂直方向の流水に方向転換するなど、長尺の硬い異物(割り箸、木片など)が通過しにくい構造となっており、拘束等の影響があります。
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@ |
回転部と共に回転し、固定部との摩擦抵抗により、過負荷運転等の影響を与える。
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A |
羽根の間に引っかかり、他の異物の通過を阻害し、閉塞等の影響を与える。
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この様な硬い異物の通過性は、前項の異物通過径と同じ扱いとなります。
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(2) |
長尺の軟らかい異物 |
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ビニールヒモなどの異物は、容易に変形するため、少量では影響が少ないのですが、一時期に大量に流入した時は影響が大きくなります。
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@ |
流水の分岐部(ケーシング舌部、羽根入口部など)に積層し、閉塞等の影響を与える。
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A |
オープン型羽根翼先端に絡みつき、吸込みカバーとの隙間で拘束等の影響を与える。
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B |
回転部(シャフトなど)に絡みつき、拘束等の影響を与える。
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C |
渦中心部(シャフト先端)で団子状に絡まって、閉塞等の影響を与える。
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長尺の軟らかい異物が汚水中に混入するケースは容易に想定されますが、このようなひも状の異物に対する通過性能の判断基準は特に定められていません。表-2に示す実験報告では、長尺の軟らかい異物(ヒモなど)の通過特性は、通過粒径の大きいポンプの方が優れていることが判ります。
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表−2 異物(ひも)通過実験報告 |
口径 |
通過粒径 |
通過ひも長さ※ |
φ50mm |
φ35mm |
200mm |
φ50mm |
φ50mm |
400mm |
φ65mm |
φ65mm |
500mm |
※投入後もしくはポンプ再起動後に通過したもの |
※ポンプタイプは渦流ポンプ |
「即時排水型ビルピット設備技術マニュアル」
(財)下水道新技術推進機構 より |
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4 |
異物の重さ(比重量)による影響 |
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異物が水に浮くか、沈むか、水中を浮遊するかによりポンプに対する影響が異なります。
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(1) |
水中を浮遊するもの |
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見掛け比重が水とほぼ同じで水中を浮遊する異物が、ポンプに吸い込まれる可能性が最も高く、性状により閉塞や拘束等の影響を与えます。
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(2) |
水面を浮遊するもの |
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一般的なポンプ施設では、ポンプ最低始動水位(LWL)付近でポンプ停止するため、水面を浮遊する異物がポンプに吸い込まれる可能性は低くなります。ただし、マンホールポンプ施設などのスカム対策として残水低減(ポンプ吸込口付近まで水位低下後にポンプ停止)を行う運転方式の場合や、水槽底部釜場への導水部の水流を積極的に利用する水槽形状の場合は、浮遊物であっても一度に容易にポンプに吸い込まれ、閉塞等の影響を与えます。また、水面を浮遊するものでも、吸水性の高い性質のもの(木片、発泡スチロールなど)は、時間と共に水中を多く浮遊するため、影響も大きくなります。
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(3) |
底部に沈澱するもの(土砂など) |
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一般的なポンプ施設では、水槽底部とポンプ吸込口の間に空間を設けるため、重い沈澱物がポンプに吸い込まれる可能性は低くなります。ただし、マンホールポンプ施設などの水槽底部の面積を積極的に小さくした水槽形状(釜場)や、水槽底部釜場への導水部の水流を積極的に利用する水槽形状の場合は、流水により沈澱物が撹拌され、一度に容易にポンプに吸い込まれ、拘束等の影響を与えます。また、水中に没した空き缶なども、見掛け比重が小さく流水の影響を受け易いため、ポンプに吸い込まれることがあります。
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異物の重さ(比重量)によりポンプに吸い込まれ易さが異なりますが、異物通過性能に直接影響を与えるものではありません。ここでは、吸い込まれにくいと思われる浮遊異物や沈澱異物も水槽形状により一度に容易に吸い込まれる可能性があることに留意する必要があります。
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5 |
異物の硬さによる影響 |
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汚水ポンプは、一般的に異物を破砕せずに通過させる構造であり、寸法的に容易に通過する異物に関しては異物の硬さによる影響は僅かです。
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ただし、ポンプは硬い異物を破砕する程のトルクを有しないため、ポンプの固定部と回転部との隙間に硬い異物が挟まった状態など、硬い異物による拘束状態に対しては脆弱です。特に、グラインダポンプをはじめとする破砕機構付きポンプでは、積極的に異物を破砕して通過させるため、破砕できない硬い異物(砂など)は混入させないことや、ポンプに吸い込ませない機構を設ける必要があります。 |