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ウォータハンマの影響 |
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ウォータハンマは、管路長さや揚程に関係なくポンプが始動・停止する度に発生するものであり、圧送式下水道輸送システムにおける単一圧送方式や多段圧送方式では表-3に示す条件に当てはまる場合はウォータハンマの影響を無視することは出来ませんが、圧力式下水道収集システムのように樹枝状になる場合はウォータハンマによる影響は軽微であるため、特別な対策は不要です。
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ウォータハンマの影響は、特にポンプの停止時に圧力管路内に残った汚水の慣性力による管路内移動で負圧部を発生させて水柱分離(沸騰現象)を生じ、次に管路の吐出口側の正圧を持った汚水が負圧部へ逆流して水柱再結合が起こります。この時、ポンプ施設の逆止弁や曲部に大きい水撃圧が作用し管路等を破壊する恐れがある為、負圧発生の防止に重点を置いた対策が必要となります。
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表−3 ウォータハンマ検討を要する条件(目安) |
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全 揚 程 |
実 揚 程 |
送 水 管 長 |
小規模下水道計画・設計・維持管理指針と解説 |
20m以上 |
10m以上 |
300m以上 |
農業集落排水施設設計指針 |
30m以上 |
20m以上 |
500m以上 |
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2 |
判定基準 |
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水が沸騰する理論的な負圧は約−10mですが、汚水中には不純物や空気が溶け込んでいるため、水柱分離を生じる負圧の値を−7mとしており、水柱分離を生じる様な負圧が発生する恐れがある場合は、ウォータハンマ軽減対策を講じる必要があります。
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3 |
対策 |
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小規模ポンプ場(マンホールポンプ施設)は、ポンプ施設をなるべく簡易な構造とした方がコスト的に有利です。ウォータハンマ検討を行った結果としてウォータハンマの対策が必要となった場合でも、管路の計画変更を中心とした対策が基本となり、対策には次のようなものがあります。
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(1) |
管内流速を下げる。 |
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管路内の流速は、一般的に1.0〜1.5m/sとしておりますが、清掃流速(最低流速)としては0.6m/s以上としており、この流速も考慮して管路径を大きくしたりポンプ計画吐出量を少なくしたりして管内流速を下げます。
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(2) |
管路の縦断面形状を見直す。 |
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最大負圧が発生する部分の管路を中心に、圧力管路ルートの変更等を行い、最大負圧を小さくします。
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(3) |
圧力管の延長を短くし全揚程を小さくする。 |
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汚水を1箇所に集めて長距離圧送を行うマンホールポンプ施設の場合は、収集箇所を複数に分散したり多段圧送による圧送方式に切り替えたりして、各マンホールポンプ施設の全揚程を小さくします。
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(4) |
自然流下で収集している場合は、代替収集案も検討する。 |
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代替収集案としては、圧力式下水道収集システムや真空式下水道収集システムがあり、各システムとの組み合わせなども検討します。
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(5) |
フライホイール付のポンプを選定する。 |
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大出力ポンプ(主に11kW以上)のマンホールポンプ施設では、設計手法として最も容易な対策であり多く採用されていますが、小出力ポンプ(主に3.7kW以下)ではフライホイール付ポンプの製作が困難であったり、非常に高価となったりするため、施設規模に対する建設コストの割高を招くばかりでなく、ポンプ補修・更新などの維持管理コストにも影響します。
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