我が国の平成18年度末における下水道普及率は全国平均で70.53%ですが、人口規模5万人未満の全国1,263市町村では普及率41.16%にとどまっており、今後は、中小都市及び中山間部での普及率向上が課題となっています。
汚水処理人口普及状況(平成18年度末現在)
 
 先ず、下水道普及が進んだ都市部での課題としては、下水道に接続したくても出来ない、いわゆる取り残された地域において、以下に示すような地域では、「自然流下方式」による汚水の収集・輸送を進めるとコスト的に著しく割高となります。
 
(1)  低地部にある地域では、自然流下方式で面整備を進めると広い地域で掘削深が深くなり仮設費が割高となるほか、掘削深が3.5m以上となる管路では推進工法などの高コストな管路布設工法を採用せざるを得なくなる。
 
(2)  岩盤、軟弱地盤、転石などの地質条件や、水道管、ガス管などの地下埋設物の多い地域では、管径の大きな配管を使用する自然流下方式では、施工が難しくなる。
 
(3)  地下水位の高い地域では、自然流下方式で地下水位より高い位置に管路を布設することは困難で、土留め水替えなどの仮設費が増加する。
 
(4)  河川、道路、鉄道などで分断されている地域では、伏せ越しなどの割高な工法で管路を布設する必要がある。 
 
 次に、普及率向上が課題となる中小都市及び中山間部での課題としては、上記に加え、次に示すような地域における面整備として、圧力管路を利用した方式の検討が必要となります。
 
(5)  人口密度が低く、住居と住居の距離が離れている地域では、住居が分散しており自然流下方式による効率的な収集が難しく、管路の布設コストが高くなる。
 
(6)  起伏が多く変化に富む地域では、自然流下管路の埋設深が深くなるなど、管路の布設コストが極端に高くなる。
 
 このような地域においては、小口径管を地形の起伏に沿って最小土被りで布設できる「圧力式下水道収集システム」や「真空式下水道収集システム」で低コストな収集システムを実現し、又、収集した汚水を輸送する場合でも、マンホールポンプ施設に代表される「圧送式下水道輸送システム」で低コストな輸送システムが実現します。又、それらを組み合わせた複合的なシステムを含めた検討を進めることで、地域に即した最適な収集・輸送システムを実現することが可能となります。

※本文は、会誌「産業機械」に投稿した原稿を加筆修正したものである。
 
作成日:平成19年12月18日
(社)日本産業機械工業会 排水用水中ポンプシステム委員会

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