グラインダポンプとGPユニット
Q01 グラインダポンプとは、どのようなポンプですか。
【回答】
 グラインダポンプは、「破砕機構付き小型水中汚水ポンプ」と呼ばれ、破砕機構としてポンプ吸込口部のケーシングに固定された固定刃とシャフトと共に回転する回転刃を持ち、流入する異物を数mm程度に細かく破砕してポンプ内につまることなく排出するポンプです。
 
 また、ポンプ特性は、圧力式下水道収集システムにおける多重圧送方式に適した高揚程・小水量特性を示します。グラインダポンプには遠心式と容積式とがあります。
 
 遠心式は、高揚程特性を示す渦流形又はセミオープン形の羽根車の回転による遠心力で汚水を加圧・搬送するポンプで、揚程が変化すると吐出量も変化し、高揚程で使用するときは吐出量が少なく、低揚程で使用するときは吐出量が多くなります。
 
 容積式は、シャフトと共に回転するステンレス製のスネーク状ロータと固定されたゴム製のステータとの間にできる空間に汚水を吸い込んで加圧・搬送するポンプで、揚程が変化しても吐出量がほぼ一定量となります。
 
【-図-】遠心式グラインダポンプの構造図(PDF)(PPT)
 
【-図-】容積式グラインダポンプの構造図(PDF)
(PPT)
 
Q02 グラインダポンプには、どのような機種が用意されていますか。
【回答】
 グラインダポンプには単相200V電源(従量電灯)用ポンプと、三相200V電源(低圧電力)用ポンプがあります。
 
 単相200V用グラインダポンプには、遠心式(口径32mm、出力0.75kW〜1.0kW)と、容積式(口径32mm、出力0.75kW)があり、三相200V用グラインダポンプには、遠心式(口径32mm〜50mm、出力0.75kW〜3.7kW)のタイプを用意しています。
 
 設計吐出し量と全揚程により選定曲線図から機種を選定します。
 
【-図-】グラインダポンプの選定曲線図
 
Q03 容積式と遠心式の特徴と使い分けを教えてください。
【回答】
 グラインダポンプの特徴と使い分け
 
1) 容積式グラインダポンプ
 容積式グラインダポンプは、ポンプ吸込口に破砕機構(グラインダ)を持ち、夾雑物が破砕された汚水をゴム製のステータとステンレス鋼製でスネーク状のロータにより加圧・圧送します。

 製作されている機種は単相200V×0,75kWのみで、ポンプ吐出量は小水量(40L/分)とほぼ一定ですが高揚程に対応できます。 但し、極端な高揚程では過負荷運転となるため適用範囲は限定されます。
 
 吐出量が少ないことより、一般家庭用に適しているほか、揚程の変化による吐出量の変化がほとんど無いので、小水量・高揚程が必要な場所や多重圧送に有利です。
 
2) 遠心式グラインダポンプ
 遠心式グラインダポンプは、ポンプ吸込口に破砕機構(グラインダ)を持ち、夾雑物が破砕された汚水を渦流又はセミオープンの羽根車で加圧・圧送します。
 
 製作されている機種は単相200V×0.75〜1.0kW、3相200V×0.75〜3.7kWと多くの機種が揃っており、ポンプ吐出量は揚程の変化により増減し幅広い範囲の汚水量に対応する事が可能です。 但し、極端な低揚程で使用する時はキャビテーションの発生に留意する必要があります。
 
 幅広い吐出量の機種が選択出来ることより、一般家庭は基よりアパート・マンションなどの集合住宅やイベント会場及び公共施設のように、汚水量及び夾雑物が多いと予測される様な場所にも使用する事が出来ます。
 
 
Q04 家庭用電源で使用できる大容量のグラインダポンプは無いのですか。
【回答】
 一般家庭用電源(従量電灯)には、単相二線式などの100V電源と単相三線式などの200V電源がありますが、より大きな容量に対応するには単相200V電源が有利です。
 
 単相200V電源で使用できるグラインダポンプとしては、口径32mm、出力0.75kW・1.0kWのものを用意しておりますが、内線規定における始動電流の制限により、国内メーカでは、出力が1.0kWを越えるグラインダポンプは製作しておりません。
 
 また、従量電灯(単相三線式)電源は、全ての電力会社より供給可能で、広く普及しておりますので、単相200V電源のグラインダポンプは全国で採用可能です。
 
Q05 グラインダポンプは、異物の閉塞は考えないでよいのですか。
【回答】
 比重の重い固形異物を除く流入汚水中に含まれる夾雑物は、グラインダにより約1mm〜5mmの大きさに破砕されます。
 
 圧力式下水道収集システムの圧力管路の最小口径は30mmと極端に小さくできますが、夾雑物は更に小さく破砕されるため、ポンプや配管等に詰まることはありません。
 
 また、ポンプで圧送するため管路内に堆積することもありません。
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Q06 容積式のポンプ構造(ねじ式ポンプ)は、金属等の固形異物にも大丈夫ですか。
【回答】
 容積式グラインダポンプの吐出量は約40L/分と少ないため、吸込流速が遅く固形異物は吸い込み難くなっています。
 
 比重の重い固形異物は底に沈んで吸い込まないため問題ありません。
 
Q07 グラインダポンプはポンプ吸込口に破砕機構を設けていますが、吸込損失が増加してキャビテーションの心配は無いのですか。
【回答】
 グラインダポンプの破砕機構は、ポンプ吐出量に合わせて汚水が通過するスリット部の面積を充分確保しているため、通常使用でキャビテーションが発生することはありません。
 
 しかし、遠心式グラインダポンプを極端な低揚程で所定の吐出量範囲を越えて運転した場合には、吸込損失が増加してキャビテーションが発生することがあります。
 
 キャビテーションが発生した状態で長期間使用すると腐食等が生じる可能性がありますが、過渡的なキャビテーションがポンプに与える影響はわずかです。
 
Q08 圧力式下水道収集システムでは水撃(ウォーターハンマ)対策は必要ですか。
【回答】
 グラインダポンプは吐出量が非常に少ないポンプであると共に、多重圧送の樹枝状配管においてGPユニットに接続されている圧力管路(接続管)は非常に短いため、グラインダポンプが急停止しても大きな負圧は発生しません。
 
 また、圧力本管には随所に空気弁が設置されており、負圧発生時には空気が取り込まれるため水撃(ウォーターハンマ)による影響がなく対策は必要ありません。
 
Q09 グラインダポンプ本体およびグラインダ部分の耐用年数はどの程度ですか。
【回答】
 通常の使用状態で、グラインダポンプ本体で15年、グラインダ部分で10年(運転時間2,000時間)程度の耐用年数と考えています。
 
 実際に10年以上経過したほとんどのグラインダポンプにグラインダの破砕能力の低下は見られません。
 
Q10 GPユニットとは、どのようなものですか。
【回答】
 GPユニットは、流入汚水を圧送する施設で、グラインダポンプ、槽内配管および水位計などをコンパクトに組み込んだ貯水タンクです。
 
 GPユニットには、遠心式グラインダポンプユニット容積式グラインダポンプユニットがあり、ポンプには汚水中に含まれる夾雑物を破砕出来るグラインダポンプ(破砕機構付き小型水中汚水ポンプ)を使用します。
 
 貯水タンクの材質は、宅地内に設置する場合は合成樹脂製、道路下に設置する場合はコンクリート製を標準としています。
 
 また、逆止弁は異物のつまりにくいボール式逆止弁(容積式の場合は、フラッパー式)を採用しています。
 
 GPユニットは、付属の電気・計装設備により、貯水タンク内の水位に応じた自動運転を行ないます。
遠心式グラインダポンプユニット
 
容積式グラインダポンプユニット
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Q11 低地の住宅排水として小型水中ポンプを使った「宅内排水ユニット」がありますが、GPユニットとどう違うのですか。
【回答】
 宅内排水ユニットは、自然流下式では収集しにくい家庭排水を収集するという目的は、GPユニットと同じですが、以下のような相違があります。
 
1) 低地の汚水を個々に自然流下管路まで圧送排水するもので、GPユニットのように多重圧送はしない。
 
2) 異物通過性を考慮した小口径ポンプを使用しているが破砕機構を有していないため、ポンプや配管の閉塞の可能性があり、維持管理として住民の協力が必要となる。
 
 
Q12 GPユニットの止水弁には、どのようなものが使用されますか。
【回答】
 GPユニットの配管出口(圧力管路接続口)部には、貯水タンク内点検時の止水のために止水弁を取り付けます。
 
 この止水弁には、一般にボール弁(鋳鉄製・ステンレス製)またはボール弁(樹脂製)が使用されます。
 
Q13 GPユニットの逆止弁には、どのようなものが使用されますか。
【回答】
 グラインダポンプの吐出口部には、ポンプ停止中の汚水の逆流を防止するために逆止弁を取り付けます。
 
 この逆止弁には、ボール式逆止弁(容積式の場合は、フラッパー式)が使用されます。
 
 ボール式逆止弁には、次のような特徴があります。
1) 弁体にゴムボールを使用し、ポンプ運転中は弁体による流路断面の減少が少ないため、スイング式逆止弁と比較して異物に対する無閉塞性に優れています。
 
2) 弁箱内面に突起部がない流路形状のため、スイング式逆止弁と比較してポンプ運転中の圧力損失が小さくなります。
 
 
 なお、容積式グラインダポンプ(ポンプ構造はネジポンプ)は、ポンプ停止中も汚水の逆流が生じない特徴を示すため、逆止弁は、簡便な構造のフラッパー式逆止弁を内蔵しています。
 
ボール式逆止弁図
 
フラッパー式逆止弁図
 
Q14 GPユニットの水位計には、どのようなものが使用されますか。
【回答】
 GPユニットには、貯水タンク内の水位を検出するために水位計を取り付けます。
 
 この水位計は、次のようなものがありますが、主に転倒式(フロートスイッチ)が使用されます。
 
1) 転倒式水位計
 耐衝撃性樹脂フロートの中にマイクロスイッチを組み込み、水面の上下変化によるフロートの姿勢変化で内部のスイッチの接点信号を取り出すタイプです。
 比較的安価ですが、1つの水位計で1つの水位を検出するため、検出水位に応じた個数を設置する必要があります。
 
2) 投込圧力式水位計
 水深による圧力を圧力センサ受圧面で受け、この受圧面の変位を電気信号に変換してコントロールユニットに伝送し、水深に換算するタイプです。
 1つの水位計で連続した水位を検出し、各検出水位はコントローラで設定します。
 
3) 気泡式水位計
 エアポンプにより空気吐出口から気泡を水中に放出させ、水深に対する背圧でコントロールユニット内の圧力スイッチを作動させるタイプです。
 1つの水位計で連続した水位を検出し、各検出水位はコントローラで設定します。
 
4) 差圧式水位計
 圧力スイッチとチューブで繋がれた検出部を水中に入れ、水深による空気圧の変化で圧力スイッチを作動させるタイプです。
 差圧式は、容積式グラインダポンプに内蔵されています。
 
 
【-図-】転倒式水位計
 
【-図-】投込圧力式水位計
 
【-図-】気泡式水位計
 
【-図-】差圧式水位計
 
Q15 GPユニットの貯水タンク容量は、どのように決定するのですか。
【回答】
 停電時またはポンプ交換等に要する時間分の汚水量やピーク汚水量が流入したときでも、貯留できる容量をもった貯水タンクを設置します。
 
 貯水タンクの各水位と容量は次のように決定します。
 
1) 非常時容量:HWL以上(デュプレックス型ではHWL2以上)
 停電時やポンプの交換時に要する時間分の汚水量又はピーク汚水量を貯留する容量とします。
 
 停電時間の一般値は2時間程度としますが、ポンプの故障などによる交換時間も考慮して、実情にあわせて決定します。
 
 また、一般的にピーク汚水量は、停電時間分の汚水量より少なくなります。
 
2) 常時運転容量:LWL〜HWL(デュプレックス型ではLWL〜HWL2)
 グラインダポンプが運転・停止する容量とします。
 
 一般に1回の運転時間(デュプレックス型では2台運転時間)が2〜3分程度になるように定めます。
 
 なお、HWL(デュプレックス型ではHWL2)は、非常時容量を考慮して、流入管底以下とします。
 
3) ポンプ停止水位:LWL
 ポンプ停止水位は、グラインダポンプの最低運転水位以上とします。
 
 
 以上のように、最初に非常時容量を確保した後に、貯留タンクの容量が決定されるため、停電時やグラインダポンプの交換時に貯水タンクより汚水が溢れ出すことはありません。
 
【-図-】貯水タンクの水位と各容量
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Q16 GPユニットの設置場所を選定する際の留意事項はありますか。
【回答】
 GPユニットの設置場所は次の事項を考慮して決定します。
 
1) 維持管理の作業ができる場所。
 
2) 雨水の流入がない場所。
 
3) 制御盤が近くに設置でき、制御盤の電源がとり易い場所。
 
4) 制御盤は警報ランプや回転灯(パトライト)が点灯した場合、住民に気付きやすい場所。
 
5) 各家庭からの排水管(自然流下管)が長くなったり深くなったりすると、貯水タンクが大きくなり不経済となるので、最も効率よく集水できる場所。
 
6) 数戸の排水をまとめて集水する場合は、維持管理や異常時の通報などの問題があるので、住民との協議を充分行って決定する必要があります。
 
 
Q17 GPユニットを設置する場合の留意事項はありますか。
【回答】
 GPユニットには、合成樹脂製貯水タンクを用いた合成樹脂製GPユニットと、コンクリート二次製品で円形の組立人孔(1号・2号)を貯水タンクとしたコンクリート製GPユニットがあります。
 
 合成樹脂製GPユニットは、主に宅地内に設置されます。
 宅地内などに合成樹脂製GPユニットを設置する場合は、素掘りでセットした後、貯水タンクの水平を出し山砂で埋め戻しを行えば十分です。
 貯水タンクが深い場合や軟弱な地盤または地下水位の高い場合は、別途基礎工事を行ない、アンカーボルト等で浮上防止する必要があります。 また、地盤沈下が予想される場合等は吐出管にフレキシブルジョイントを用いることもあります。
 
 コンクリート製GPユニットは、主に道路などの上載荷重が大きな場所に設置されます。
 道路などにコンクリート製GPユニットを設置する場合は、マンホールポンプ施設と同様です。
 
Q18 GPユニットの電気設備の留意事項はありますか。
【回答】
 電源の引き込みは、電力会社との単独の契約で受電する方法と、家庭内電源から分岐する方法がありますが、配線方法は内線規定や電力会社の規則によらなければなりません。
 
 単独で受電する場合は、取引用計器は、電力会社が検針出来る位置・高さに設ける必要があると共に、取引用計器と主開閉器を収納するボックスを設けて制御盤へ電源供給することで、制御盤の点検時等により安全な停電作業が行えます。
 
 同様に、家庭内電源から分岐する場合も、配電盤内にはGPユニット用の主開閉器を取り付けて、制御盤に電源供給します。
 
 制御盤の設置場所は、GPユニットにより近い場所に設置することで、GPの運転状況を確認しながら操作が行えます。又、警報用回転灯(パトライト)が住民の目につきやすい場所に設置することにも留意する必要があります。
 
 電線管の布設に関しては、電線管を通じて雨水や湿気が制御盤内に浸入しないようにする必要があり、特に、貯水タンクと制御盤との間の電線管には、管の両端をコンパウンド等で密封することも必要です。
 
Q19 単相電源と三相電源との電気料金の違いを教えてください。
【回答】
 戸建住宅でのGPユニットの運転時間は約30分/日(15時間/月)程度です。
 
 1.0kWのグラインダポンプを使用する場合のケーススタディ(平成21年4月現在の電気料金)では、下の通りとなります。
 
1) 三相200V電源用ポンプ(低圧電力)を採用した場合
 契約容量1.0kW、消費電力量36.8kWh程度(制御盤の消費電力含む)となり、各電力会社の平均電気料金は、月当たり約1,500円となります。
 
2) 単相200V電源用ポンプ(従量電灯)を採用した場合
 消費電力量38.0kWh程度(制御盤の消費電力含む)となり、各電力会社の平均電気料金は、月当たり約1,000円となります。
 
 
Q20 GPユニットとマンホールポンプ施設にはどのような相違がありますか。
【回答】
 構造の違いは以下の通りです。
 
構造項目 マンホールポンプ GPユニット
ポンプ口径 基本的にφ65mm以上 φ50mm以下
ポンプ台数 2台以上 基本的に1台
予備ポンプ ポンプ施設に常設 共通予備として保管
貯水タンク 組立人孔 組立人孔、FRP製
設置場所 道路下 道路下、宅地内
搬送方式 主に単独圧送 主に多重圧送
スカム対策 必要(予旋回槽等) 不要(発生せず)
 
Q21 グラインダポンプは、マンホールポンプ施設に使用できますか。
【回答】
 マンホールポンプ施設に使用されるポンプは、異物による閉塞を考慮して口径65mm以上の汚水汚物ポンプが使用されています。
 
 しかし、計画汚水量が少ない場合に口径65mm以上の汚水汚物ポンプを採用すると過大な設備となりますので、「小規模下水道計画・設計・維持管理指針と解説」などに示されているように、設計上、口径50mm以下のポンプとなる場合は、破砕機構付き水中汚水ポンプ、即ちグラインダポンプが選定されます。
 ただし、土砂等の混入によるグラインダ部分の摩耗には充分注意が必要です。
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作成日:平成21年06月30日
(社)日本産業機械工業会 排水用水中ポンプシステム委員会

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